今回は、ブドウの糖度や酸度の変化についてのお話です。
ブドウの生育過程で糖度、酸含有量、pHはどのように変化するのでしょうか。
実がなり、色づき始めると成熟期に入り、最終的に完熟期を迎えます。
この過程で、糖度は高まり、酸含有量は減少します。
また、pHも変動します。
糖度や酸度は、ブドウの品種や栽培条件によっても異なりますが、その一般的な変化のパターンについてお伝えします。
ワインを飲むときに、ブドウの糖度や酸度のことを少し考えていただければ、さらに美味しく楽しむことができるでしょう。
糖の話
ブドウの主な糖は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)です。
果糖の方がブドウ糖の2倍程度、甘味度があります。
弊社代表が参加する千曲川ワインアカデミー(https://jw-arc.co.jp/academy)の、若生ゆき絵先生の「味覚の基礎テイスティング」の講義では、味覚の理論と味覚のテイスティングの実践があります。
余談ですが、千曲川ワインアカデミーは机上の理論に加え、希望者には実践の場もあり、理論と実務を結びつけながら網羅的に勉強する機会が提供されています。
ブドウの糖分は、日本ではマストの比重で表現されることが多いです。
現場では、ボーメ、ブリックス、エクスレの3つの単位が伝統的に使われています。
ボーメは、糖が発酵し辛口ワインになった時のおおよそのアルコール%を示しています。
例えば13ボーメのマストからは、アルコール度数13%のワインになります。
エクスレは、(マストの密度―1)×1000という公式で導かれます。
ドイツ、オーストリアなどで使われることが多いです。
ブリックスは近年、ワイン業界で糖含量の単位として最もよく使われています。
これは、100gの溶液中の総固形分のグラム数です。
重さと重さの比を%で表したものです。
現場では、このような数値を比重計や屈折計による光学的な測定器を使い計測しています。
器具さえあれば、結構簡単に計測できます。
小学校の理科の勉強を思い出してください。
砂糖は温度により溶ける量が変化しましたよね。
そのため、果汁の温度を測り、20°Cの温度に換算して数値を補正します。
測定されたブリックとワインのアルコール度数の関係はどうなっているのでしょうか。
一般に、ブリックス×0.57=アルコール度数と言われています。
ブリックスが24ならアルコール度数は13.5度程度になると予測できます。
酸の話
ワインの酸は、ブドウが持つ酸とワイン醸造の過程でできる酸の2種類があります。
ブドウが生成する酸は、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸があります。
ワイン醸造で組成される酸は、コハク酸、酢酸、乳酸があります。
ここで、一つ整理して理解することがあります。
酸度といった時、TA (総有機酸量) と pH (水素イオン濃度)の2つがありますが、この2つは似て非なるものです。
TAは、ワインに含まれる有機酸の総量です。
pHは、有機酸が電離して生じる水素イオンの濃度です。
昔は、TAが手軽の計測できず、pHを使ってきた経緯があります。
ワインに含まれるTAはpHと相関がありますが、厳密には別のもので、TAはワインの味わいにかかわる指標、pHはワインの品質管理にかかわる指標と理解してください。
通常白ワインのpHは低め(数値が小さいと酸性)で3.0から3.5です。
スパークリングワインを作る場合は、完熟する前のpHが低いブドウを収穫するためpHが白ワインより低い数字になります。
酒石酸とリンゴ酸の関係
酒石酸とリンゴ酸はワイン味を決めるカギとなる酸です。
ブドウが熟す前は、この2つの酸の濃度はほぼ同じですが、成熟が進む過程で、リンゴ酸は少しずつ減少し、酒石酸は変化しないことがわかっています。
完熟すると酒石酸はリンゴ酸より多くなります。
またリンゴ酸は、アルコール発酵後に行うマロラクティック発酵という過程で乳酸に変化します。
そのため、最終的なんワインの中での濃度は低くなります。
ワインにとって一番良いブドウの収穫期は?
ここまで、糖と酸の話をしてきました。
それでは、いつ収穫すれば、美味しいワインになるのでしょうか。
よく、ワイナリー経営者にどのようにして収穫の時期を決めますかと質問をしてみますが、それぞれに回答が異なります。
その年の糖度、酸度、香り、病気、害虫、天候のすべての要因を考慮にいれて、総合的に収穫時期を判断しているといえます。
実際には、畑にでて、サンプリングをして成熟の度合いを計測し、データを収集しています。
サンプリングといいますが、実際にぶどうの樹の成長、日当たり、一つの房の前側と後側など、成熟度はまちまちで、正確なデータ収集は、とても難しいのです。
そのような状況で、収穫日を判断し、皆さんに美味しいワインが届くのです。