フリーランとプレスラン
ワインの話で、「フリーラン」と「プレスラン」、この言葉を聞いたことはありますか。
ブドウを絞るタイミングは、白ワインでは発酵前、赤ワインでは発酵後に行われます。
ワインの専門用語で言う「フリーラン」とは、圧力をかけずに自然に流れ落ちる果汁のことを指します。
発酵前のブドウから出てくるフリーラン果汁と、発酵後のブドウから出てくるフリーランワインでは、同じフリーランでもその中身が変わっています。
それは、発酵後のフリーランには、発酵によりブドウに含まれる繊維質が変化して流れ出すからです。
「フリーラン」に対する言葉として「プレスラン」があります。
プレスランとは、プレス機によりマストをプレスすることで取り出した果汁(ワイン)のことを指します。
フリーランとプレスランによるワインの違い
プレスランによる果汁やワインは、フリーランの果汁やワインと味わいが異なります。
プレスランの果汁やワインは、色素やタンニンなどのフェノール化合物が多く含まれ酸度が下がり、揮発酸が多く含まれるため植物的な青臭さが出やすいワインになります。
これをマネジメントするのが醸造家の腕の見せ所となります。
以前ニュースで紹介したワイン作り研究所では、フリーランで作った甲州とプレスランで作った甲州を販売しています。
プレスランはフリーランと比較し、同じ甲州でも黄色が濃く、味もタンニンの渋みが多く含まれていました。
フリーランとプレスランの違いを味わいたい人にはお勧めです。
圧搾機とは
果汁(ワイン)を取りだす圧搾機には大きく2つの種類があります。
一つが回転式プレス、もう一つが水平式プレスです。
大量生産が必要な醸造施設では、水平式プレスが主流です。
私が醸造の研修を受けているワイナリーでも水平式プレスを使っています。
回転式プレスは、古くから使われ、昔は木製でした。
手動のジャックで少しずつ圧力をかけてワインの原料となる果皮と果実を絞ります。
この機械の弱点は、圧力をかけてもすべての液を取り切れないことです。
また、圧縮後のワインの原料(ケーキと呼ぶことがあります)を取り除き洗浄するとき、ケーキが固まり、それをほぐす作業が大変です。
このような課題を解決したのが、ステンレスで作られた水平式プレスです。
水平におかれた円筒に上からワインの原料を入れ、円筒が回転し、内部にあるエアバックが膨らみ、回転しながら均一に圧力がかかるようにします。
最近の機械では、圧搾からかすの排出までのプレス工程は2時間から4時間でオートプラグラムが制御してくれます。
これによる圧搾の工程は楽になりました。
といっても、実際に、かすを機械から排出し機械をくまなく洗浄することはそれなりにハードワークです。
この機械からでてくる果汁は、固形部分が少なく全体の2%から4%で、白ワインの醸造としては清澄化された果汁になっています。
この果汁を1日置き、デブルバージュDebourbage(仏)をするときも、滓として沈殿量は少なくきれいな果汁で発酵プロセスに入ることができます。
このため、すっきりした白ワインになります。